教 


【呉音】キョウ(ケウ)  【漢音】コウ(カウ)
おしえる, おそわる, おしえ, しむ, せしむ


会意兼形声。
もと「攴(動詞の記号)+音符爻(コウ)(まじえる)」で、さらに子を加えた字もある。子どもに対して、知識の受け渡し、つまり交流を行うこと。
▽知識の交流を受ける側からいえば学・効(習う)といい、授ける側からは教という。


(1)おしえる(をしふ)。
先生とでしの間に、知識を交流させること。先生からでしに、知識・経験・技術を受け渡して知らせる。また、そうして導く。「教化」
「挙善而教不能=善を挙げて能はざるを教ふ」〔論語・為政〕
(2)おしえ(をしへ)。
おしえる事がら。また、その内容。
「敬奉教=敬んで教へを奉ぜん」〔史記・荊軻〕
(3)おしえ(をしへ)。
神や仏のおしえ。また、その内容。「教義」「教会」
(4)領主の命令。「教令」
(5)宗教。「回教」
(6)しむ。せしむ。
おしえて何かをさせることから転じて、使役の意をあらわすことば。
▽「教+名詞+動詞」の形で用い、「…をして…せしむ」と訓読する。平声に読む。
《類義語》⇒使・令。
「遂教方士殷勤覓=遂に方士をして殷勤に覓めしむ」〔白居易・長恨歌〕

交(まじえる)・較(コウ)・(カク)(まじえ比べる)・效(コウ)(=効。交流して習う)などと同系。


「交」の字をもっと抽象的な記号で表したのが「爻」である。この字は×印を二つ合わせて、交叉することを示した指事文字である。皿の上に×型に交叉させてならべたごちそうを肴という。さまざまな物が交叉しているのを混「肴+殳」(こんこう)するという。この「肴+殳」は「交」と同じ意味である。

大人が教え、子供がそれを受けてまねる。大人と子どもの間に交流が生じる。それを「爻+子」(コウ−教の字の左側)と書き、また「效」(ならう、まねる)とも書く。教の字の左側には×印と「子」の字とを含んでいる。右側は動詞の記号である(攻・改・政治などの右側と同じで、手に棒か道具を持って作業する姿を表す。しかし「攴」印が教の字に含まれるからとて、子どもを棒やムチで叩いてしつけたわけではない。「攴」は動詞を表すための記号だと考えてよい)。「教」とは、AとBの間に交流の生じることを本義とする。

教えるAの側からいえば「おしえる」ことに違いないが、受けるBの側からいうと、「效(なら)う=まねる」ことである。したがって教育の「教」と、倣效(みならう)の「效」とは、同じ動作の両面にすぎない。
【漢字語源辞典(藤堂明保)より】


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