〔1〕 なぜ「漢字はむずかしい」のか |
1.漢字をむずかしくした人々 漢字を「むずかしい」と思わせるもうひとつの原因があります。 それは、わざとだれもが知らない、むずかしい漢字を使いたがるどうしようもない大人がいることです。この人たちは、自分に「学問」があることを見せびらかそうとして、「字引」をいっしょうけんめいに引いて、いろんなところから、わざわざむずかしい漢字をひっぱりだしてきて、自分が書く文章のなかに書きならべます。 これを漢字の「乱用」(濫用)といいます。こういう人たちは、子どもたちが漢字をまちがえたり、大人が簡単な漢字を知らなかったりすると、 「こんな字も知らないのか、本当にいまどきの・・・」 などといって他人をばかにします。しかし、ばかげたことをしているはどっちでしょうか。 やさしいものをむずかしいと思わせること、やさしいことをむずかしく表現することほど無意味なことはありません。わざわざむずかしい漢字を使う人のほうこそどうかしているのです。こういうどうしようもない人たちがいると、その人たちが書いたものを読まされる私たちは、たいへん迷惑します。 ことばや文章というものは、他人に伝えるためにあります。ですから、それがむずかしすぎて他人に理解されなかったらなんにもなりません。文章はやさしいほどよいのです。君たちは、こんなどうしようもない大人のまねをしないほうがいいでしょう。 |