漢字家族(語源,漢字,漢字の語源) (1)まえがき (2)漢字家族解説編(漢字をグループごとに解説) 藤堂明保博士の学説をわかりやすく紹介します。 ワードファミリー,語源,単語家族 トップ

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大切に包む

『漢字の知恵』(藤堂明保・徳間文庫)より   
※「腹・覆・包・保・宝・浮の家族」へ!

 の字のまん中の印は、頭だけ生じてまだ手足のない胎児の姿、外側はそれを子宮内膜ですっぽり包んだ姿である。のち同じ腹から生まれた子を同胞といい、はら児をというのは、の原義をよく残している。たいせつな物をすっぽり包むのをホウというのである。

図解:  手へん(五本の指がある手の形)をそえたは、手で物をすっぽり包んでだきこむこと、は中に空気を包みこんだアワ、はツボミをすっぽり包む外皮である。という字は、左右のエリもととその後のエリを描いたもの※図解で、衣へんを加えたは、体をすっぽり包む外套(ガイトウ)である。硝石(火薬の原料)を中に包みこんだビックリ玉をという。してみると、包─胞─抱─泡─苞─袍─砲はすべて「中にすっぽりつつむ」という基本義を含んでいる。
 これをまとめると、次のようになる。

 <語根ホウ>
── 名詞(つつみ)・動詞(つつむ)。
── 肉づきをつけた。名詞。
── さん水をつけた。名詞。
── 草がんむりをつけた。名詞。
── 衣へんをつけた。名詞。
── 手へんをつけた。動詞。
── 食へんをつけた。(食物をおなかいっぱいにつめこむ)。動詞。

 ところで、このホウというコトバを表すのは、の系列だけではない。呆─保─宝などもこの同じグループに属する。

 は、子(赤ちゃん)をU型のオムツでたいせつに包んださまを示す。のちオムツを(ホウ)というから、の原字であるといってよい。幼児はだいじに包んで、風邪や外界の害を受けぬよう守ってやらねばならない。その守り役をする人という。今日の保護者保証人とは、その意味をよく残している。保存するとは、言いかえればたいせつに包存することにほかならない。

 それでははどうであろうか。この字はもと「宀(やね)+玉+貝+缶」と書いた。はお酒を保存する腹の丸い土器のことで、日本ではホトギという。これも丸い腹に酒を包むようにして保存するのでホウという。玉や貝(財貨のこと)は、もとよりたいせつな財産だから宀(やね)包んで保存せねばならない。つまりとは、保存すべき大切な物のことで包蔵することをまた宝蔵といいかえてもよい。

 してみると、ホウというコトバから派生した何十という派生語を表すために、何十という漢字が作られていることがわかる。要するにコトバが先にあって、それを表す漢字があとに作られたのである。そこで漢字の外形だけを、どんなににらんでみてもその表すコトバの本当の意味はわからない。ましてや日本語に訳して、包(つつむ)─抱(いだく)─保(たもつ)─宝(たから)といってしまえば、相互になんの関係もない、バラバラの存在になってしまう。

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